作品履歴2020

「華と灯りの路地飾り」白鳥庭園 観楓会:2020.10

感染症パンデミックにより、これまでの日常が大きく変化した2020年でしたが、
数年来担当させて頂いている竹林で、今年は「○△□」をテーマに生け込みをしました。
仙崖で有名な「○△□」の解釈は諸説ありますが、一般的には禅の極意を表すといわれています。
○=円相 △=坐相 □=捉われの心
※「○△□」についてはこのあともう少し詳しい説明があります。

禅を離れ、今回の作品には「不安という世の中(□)であっても、心を鎮め穏やかに(△)、
平和に大乗的に(○)過ごしていけるように」という願いを込めました。

MARU SANKAKU SIKAKU

日本最古の禅寺である博多聖福寺第123世住職「仙崖義梵(せんがいぎぼん)」(1750 ~ 1837)の
筆によることで有名な「◯△□」は、禅の極意を表わすために禅宗独特の「不立文字」
(大切な事は文字に表さない)で描かれた画と言われています。
禅を海外に広めた仏教学者「鈴木大拙(すずきだいせつ)」(1870~1966)は、
無題のこの画を見て「The Universe」と英訳したそうです。
「◯△□」の単純な三つの図形は宇宙の根本的形態を示し、
密教の六大思想(地水火風空識)を地(□)水(◯)火(△)で象徴したものとも言われています。

  円相
禅では禅思想の要点や奥義を描き表わす時に◯を描き、これを円相と言います。
◯はどこまでも欠けることのない絶対的な悟りや真理、仏性、宇宙全体などを
象徴的に示したものです。とはいえ、◯という形に促われてはいけません。
○に促われた心では◯を描くことができないからです。大切な真理を見失ってしまいます。

△  坐相
どっしり腰を据え、頭は天を衝き上げている状態で坐禅を組む姿、
促われの無い心で仏と一体となっている姿を表しています。

□  促われた心
私達は社会常識という□の中に囲まれて生きており、そこで悩み、
人によって価値観の違う「常識」という観念に縛られて生きています。
しかしその□から一歩踏み出すことによって、促われのない自由の境地に達することができます。
□のどこからでも踏み出すことができ、その一歩こそが禅の入口だと言われています。

◯△□  宇宙・無限
ニ角形というものは無く二本の線では形になりません。三角形になって初めて形ができます。
三角形が出来れば二つ合わせて四角形が出来、五角形•六角形•七角形 … 百角形 … 一億角形 … 一兆角形となりますが、まだ完全な◯とは言えません。しかし、目で見ればほとんど◯に見えるでしょう。
完全な◯でなくても無限の世界では限りなく◯に通じていくということから
「◯△□」は宇宙を表わすということでしょうか?

禅の解釈は非常に難しく、凡人の私達が生きている間に
「◯△□」を理解するとことなど到底叶わないのかも知れません。

一部内容は上越教育大学 押木秀樹氏の「仙崖「◯△□」の私的解釈」(2004)より